Lesson 5

AIの導入事例

Lesson 5 Chapter 1
製造業での事例

Lesson 5 では、さまざまなAIの導入事例を紹介していきます。 AIの導入事例は非常に多くなってきており、それらをすべて網羅的に述べることはできませんが、 ここで説明する例を通して、現在AIが世界でどのように用いられているのかをある程度感じ取ることができるでしょう。 単にAIについての技術を学ぶだけでなく、実際にどんな利用例があるかを知ることで、AIについて学ぶことへのモチベーションを高めるとともに、 自分でAIを使ったアプリケーションを作る際の参考にすることができるでしょう。

最初に、製造業におけるAIの導入事例を紹介します。 AI活用の具体的分野としては、画像処理による外観検査・検品、工場内の作業監視によるミスの防止、 製造設備のセンシングデータを分析した異常検知などがあります。

外観検査AIの例として、株式会社フツパーが提供する「メキキバイト」があります。 環境に最適な構成・AIアルゴリズムを採用し、高速な外観検査処理を実現しています。 また、異常が見つかった際のデータを用いて再学習させることができるといいます。

また株式会社ダイセルは、株式会社日立製作所と共同し、作業員のミス防止のための画像解析システムを導入しています。 複数のカメラを用いて作業員の実際の動きと標準動作モデルを比較・分析することでミスを検知することや、設備の稼働状況についても異常を検知することなどにより、 製品の工程内保証率の向上や不具合の未然防止に繋がったといいます。

また株式会社SUPWATは、製品の研究開発の段階で用いる機械学習ツール「WALL」を提供しています。 これはデータの活用によって材料開発における適用可能性をすぐに判断したり、パラメータの最適化をしたりするもので、 比較的少ない学習データで高精度なモデルを作成できるといいます。


出典

  • メキキバイト. 「メキキバイト」. https://mekiki-baito.com/, 2023年4月4日参照.
  • 株式会社ダイセル. 「ダイセル式生産革新」. https://www.daicel.com/manufacturing/, 2023年4月4日参照.
  • PR TIMES. 「AIで製造業に新しい価値を届ける機械学習ツール「WALL」をローンチ 〜解析工数 最大1/80短縮、世界初・水素タンク設計の最適化機能も展開し製造業の業務効率化をサポートへ〜」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000081631.html, 2023年4月4日参照.

Lesson 5 Chapter 2
自動車産業での事例

自動車産業におけるAIの導入事例を紹介します。 自動車産業においては、自動運転技術のほか自動車の設計場面などにAIが導入されています。

株式会社ZMPは、私有地に置いて利用できる自動運転車両として、自動運転小型EVバスや自動運転トラックを提供しています。 例えば小型EVバスは、工場・プラント・物流・空港・港湾施設・商業施設などの私有地において、省人化のために活用できるといいます。

またアメリカの半導体メーカーであるNVIDIA Corporation は、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)や画像処理、AI 分野での経験を活用することで、 自動運転技術のための、ソフトウェア定義のエンドツーエンド(端から端まで)のプラットフォームを構築し、提供しています。 また2017年にはトヨタ自動車株式会社との提携を発表しており、さまざまな運転状況に対応できる高性能な自動運転システムの実現を目指しています。

また株式会社本田技術研究所は、ボンネットフードの形状の最適化にAIを導入しています。 歩行者保護性能を左右するボンネットフードの性能予測に約40時間かかっていたのを、機械学習の利用により10秒程度にまで短縮することができたといいます(ただし、開発初期段階の参考情報)。


出典

  • 株式会社ZMP. 「製品・サービス」. https://www.zmp.co.jp/products, 2023年4月4日参照
  • 株式会社ZMP. 「自動運転小型EVバス RoboCar Mini EV Bus」. https://www.zmp.co.jp/products/robocar/robocar-mini-ev-bus, 2023年4月4日参照
  • NVIDIA. 「自動運転車のためのソリューション」. https://www.nvidia.com/ja-jp/self-driving-cars/, 2023年4月4日参照.
  • NVIDIA. 「NVIDIA とトヨタ自動車、自動運転車の市場導入加速に向けてコラボレーション」. https://www.nvidia.com/ja-jp/about-nvidia/press-releases/2017/toyota-accelerating-introduction-autonomous-car-20170511/, 2023年4月4日参照.
  • 株式会社IDAJ. 「歩行者保護性能評価業務の効率化とさらなる技術深耕のためにAIコンサルティング・サービスをご活用」. https://www.idaj.co.jp/case/idaj_news_vol96/?_fsi=gV7A3d35, 2023年4月4日参照

Lesson 5 Chapter 3
生活インフラでの事例

生活インフラにおけるAIの導入事例を紹介します。 インフラの構築や、点検、保守についての導入例があります。

パナソニック株式会社およびパナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社は、ロボティクスと画像処理技術を活用したインフラ点検サービスである「Smart Image Sensing」を提供しています。 老朽化が進む各種インフラ設備については、新規インフラの構築や既存インフラ維持のための点検・保守・老朽化対策、そして点検・保守にあたる要員確保が課題となってきていますが、 ロボットや4K画像などの撮像デバイスと最新の画像処理技術を活用してそれらの解決をサポートしています。

またキヤノン株式会社は、社会インフラ構造物の近接目視点検の代替手段として、豊富なカメラ・レンズ群や独自の画像処理技術、そしてAI技術を融合させた、インフラ構造物点検サービス「インスペクション EYE for インフラ」を提供しています。 撮影・画像処理・変状検知の3つのサービスで構成されており、どのプロセスからでもサービス利用が可能であるといいます。

また清水建設株式会社は、名古屋工業大学と共同して、トンネル計画線に応じたシールド機操作の計画値、セグメント配置計画を自ら設定し、自己学習を繰り返してこれらを改善・最適化していくシステムである「シールド掘進計画支援システム」を開発しています。 シールド掘進をゲームに見立て、与えられたトンネル計画線に応じてAIが模擬掘進を行い、その結果を得点化したものを最大化するようにAIに学習させます。


出典

  • Panasonic Group. 「「インフラ点検サービス Smart Image Sensing「4K画像活用構造物点検サービス」、「インフラ設備撮影サービス」の提供を開始」. https://news.panasonic.com/jp/press/jn180402-1, 2023年4月4日参照
  • Canon. 「画像ベースインフラ構造物点検サービス インスペクション EYE for インフラ」. https://canon.jp/business/solution/inspection-eye, 2023年4月4日参照
  • 清水建設. 「AIによるトンネル掘進計画の最適化「シールド掘進計画支援システム」」. https://www.shimz.co.jp/solution/tech357/, 2023年4月4日参照

Lesson 5 Chapter 4
農業での事例

農業におけるAIの導入事例を紹介します。収穫のためのロボットや、病害の予測などにおいてAIが使われています。

農研機構、立命館大学、株式会社デンソーは、共同して農作業の大幅な省力化を推進しており、 V字樹形のリンゴ、ニホンナシ、セイヨウナシを対象とした果実収穫ロボットのプロトタイプを開発しました。 自動走行車両にけん引されながら、2本のアームにより果実の収穫を行い、それらは自動走行車両の荷台に設置した果実収納コンテナシステムに送られます。 このロボットの収穫の早さは人による収穫の早さとほぼ同じであるといいます。

また株式会社オプティムは、AI・IoT・ドローンを活用して“楽しく、かっこよく、稼げる農業”を実現するべく、スマート農業を推進する取り組みである「スマート農業アライアンス」を実施しています。 これには、生産者だけでなく企業や金融機関、自治体、大学なども参画でき、参画した個人や団体は、 「スマートアグリフードプロジェクト」(AI・IoT・ドローンを利用して「減農薬」を達成して、高付加価値がついた農作物の生産、流通、販売を行うプロジェクト)および 「スマートデバイスプロジェクト」(スマート農業を実現するキーとなるスマートデバイスを活用し、生産者の農作業の負担軽減や技術伝承の問題を解決するプロジェクト)などに参加できるといいます。

またバイエル クロップサイエンス株式会社は、3つのセンサーと通信機で温度や湿度などハウス内の環境を離れた場所から確認でき、さらにAIによる病害予測機能も搭載したサービス「プランテクト」(ボッシュ株式会社が開発後バイエル クロップサイエンスにより事業買収)を提供しています。 センサーが環境データを10分ごとに取得し、トマトやキュウリなどの主な病気の感染リスクをAIが予測します。またさまざまな栽培データを保存することで次の栽培に活かすことができるといいます。


出典

  • DENSO. 「果実収穫ロボットのプロトタイプを開発 ~人とほぼ同じ速度でのリンゴやナシなどの果実収穫を実現~」. https://www.denso.com/jp/ja/news/newsroom/2020/20201223-01/, 2023年4月4日参照
  • OPTiM. 「未来志向の生産者たちと取り組む「スマート農業アライアンス」、参加団体数が1,000団体を突破」. https://www.optim.co.jp/newsdetail/20190227-pressrelease, 2023年4月4日参照
  • プランテクト. 「プランテクト®でできること」. https://cropscience.bayer.jp/ja/home/plantect/plantect.html, 2023年4月4日参照

Lesson 5 Chapter 5
医療・介護分野での事例

医療・介護におけるAIの導入事例を紹介します。

医療分野では、医師の画像診断の支援や創薬のほか、医療研究の支援、医療機器の遠隔操作などにおいてAIの使用が実施・検討されています。

エルピクセル株式会社は、画像診断を支援するAIソフトウェア「EIRL」を提供しています。 多様な医療ビックデータを活用した独自のAIアルゴリズムにより、胸部CT画像から「関心領域」を抽出したり、胸部X線画像から肺結節に類似した領域を検出したりといった医療画像診断支援技術を開発しています。

また株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社DeNAライフサイエンス、住商ファーマインターナショナル株式会社、および日本ケミファ株式会社は共同で、 製薬企業各社から提供される化合物データを用いてAI創薬の実現可能性を技術的に検証する研究を行っています。 創薬プロセスには通常多大なコストや時間がかかりますが、AI技術の利用によって化合物最適化段階の大幅なコストおよび時間低減に繋がる技術を開発し、検証することを目的としているといいます。

一方、介護分野では、介護ロボットや高齢者のケアおよび健康維持のためのソフトウェアなどでAIが用いられています。

丸文株式会社は、Aeolus Robotics Corporation のAIを搭載したヒューマノイドAIロボット「アイオロス・ロボット」を販売しています。 3Dビジョンによる顔検知や姿勢の検知、2本のアームとグリッパーによるスライドドア開閉やエレベーターのボタン押し、紫外線を照射するグリッパーの装着による局所除菌・広範囲除菌などといった機能を備えており、 介護や病院での作業に利用できるといいます。

また株式会社ニチイ学館と日本電気株式会社は共同で、AIを活用した高齢者の介護・自立支援サービス開発に向けた共同研究を行っています。 要介護者に対する身体介護、調理、掃除などの生活支援に向けたケアプランに加え、AIによる根拠をもとに要介護者のより効率的な運動機能改善などを促す新しいケアプランを作成することで、 介護事業者が要介護者の自立を促すサービスの開発を支援するといいます。


出典

  • EIRL. 「医療AIとともに「安心」と「革新」を」. https://eirl.ai/ja/, 2023年4月4日参照
  • DeNA. 「製薬企業の化合物データを活用したAI創薬に関する共同研究等を実施」. https://dena.com/jp/press/3535/, 2023年4月4日参照
  • DeNA. 「DeNAが推進するAI創薬プロジェクトに日本ケミファが参画」. https://dena.com/jp/press/4481/, 2023年4月4日参照
  • Marubun. 「ヒューマノイドAIロボット Aeolus Robot(アイオロス・ロボット)概要紹介」. https://www.marubun.co.jp/products/3019/l, 2023年4月4日参照
  • NEC. 「ニチイ学館とNEC、医療・介護分野で業務提携 ~AIを活用した高齢者の介護・自立支援サービス開発に向けて共同研究開始~」. https://jpn.nec.com/press/201711/20171110_01.html, 2023年4月4日参照

Lesson 5 Chapter 6
防犯・防災分野での事例

防犯・防災におけるAIの導入事例を紹介します。

防犯においては、監視カメラの映像などのデータを用いて、窃盗や詐欺などを未然に防ぐ目的でAIが活用されることが多くなっています。

株式会社トリニティーは、防犯カメラの映像内に設定された警戒エリア内に「人」が映ると、その瞬間の画像を即時スマートフォンに通知するシステムである「TRINITY AI 人検知システム」を提供しています。 最新のAI映像解析によって実現された高精度検知とリアルタイムでの画像通知により、夜間・土日のオフィス、工場や自宅・別荘の防犯に利用できるといいます。

また警視庁は、AI内蔵カメラを都内のコンビニ店に設置し、携帯電話で通話中に ATM を操作する利用客を検知する実証実験を行っています。 ATM 利用を利用している客の姿勢から通話を行っていると AI が判断すると、それが店員に伝えられる仕組みになっているといい、 これにより店員が客に声をかけるなどして還付金詐欺の被害を未然に防ぐことを目的としています。

警視庁は他にも、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)と特殊詐欺対策で連携を行っており、 警視庁が提供する情報によって、通話内容を1分単位でクラウド上のAIで解析するNTT東日本の「特殊詐欺対策サービス」の精度を向上させることを目的としています。

一方防災においては、毎年引き起こされているさまざまな災害の被害の予測や対策にAIを活用するということが推進されています。

内閣府は、AI技術の防災・減災への活用に取り組んでいます。 災害時にSNS上でAIが被災者と対話することにより国民一人ひとりに避難等の情報を提供し、さらに被災状況を収集・分析する防災チャットボットや、 災害時にAIが衛星画像データを解析して被災範囲を即時に判読するシステム、市町村長の避難指示・勧告の発令の判断にAIが必要なデータを抽出し、地区単位でリスク指標を表示する避難判断・誘導支援システムをそれぞれ開発しようとしています。


出典

  • 株式会社トリニティ 中部防犯カメラセンター. 「TRINITY AIカメラ 人検知システム 防犯カメラのAI機能によって犯罪被害を防ぐ「予知防犯」」. https://www.trinity4e.com/ai/index.html. 2023年4月5日参照
  • 日本経済新聞. 「警視庁とNTT東日本、AI活用の連携 特殊詐欺対策で」. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE284QE0Y2A320C2000000/, 2023年4月5日参照
  • 読売新聞オンライン 「「ATMで携帯使用」AIが検知したらブザーでお知らせ…警視庁、セブンで詐欺防止実験」. https://www.yomiuri.co.jp/national/20221126-OYT1T50131/, 2023年4月5日参照
  • 内閣府 防災情報のページ. 「防災の動き」. https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/r01/98/news_05.html, 2023年4月5日参照

Lesson 5 Chapter 7
エネルギー分野での事例

エネルギー分野におけるAIの導入事例を紹介します。 エネルギー業界では、主に電力をどのように供給するかについて、電力需要を予測したり運用を効率化したりといった場面でAIが用いられます。

日本気象協会は、各電力事業者が取引する電力需要量を電力エリアごとに予測するサービスである「電力需要予測」を提供しています。 過去の電力需要のデータを社会活動・気象条件等の変動要因に基づいて解析し、予測モデルを構築することで、高い予測精度を実現しているといいます。

また株式会社グリッドは、発電と送配電に関する設備やエネルギーデータなどのさまざまな環境をデジタルツイン上に再現し、AIによって最適化する技術を開発しています (なおデジタルツインとは、仮想空間上に現実世界と同じ環境をまるで双子のように再現する技術のこと)。 高度な制御スキルが求められる発電機起動停止計画をAIによって最適化したり、 送配電ルートについて、電力ロスの最小化や増設時の最適なルートのシミューレーションによる設備投資の最適化をしたりしているといいます。

また関西電力株式会社は、AI技術やIoTを活用したビックデータ分析を行い、設備不具合の予兆を検知できる「早期異常検知システム」を開発しています。 本システムを利用した遠隔監視センターを開設し、発電所の運転データをリアルタイムで監視するとともに、設備異常の早期発見を行うことで、トラブル事象の未然防止に努めるといいます。


出典

  • 日本気象協会. 「電力需要予測」. https://www.jwa.or.jp/service/weather-and-data/weather-and-data-02/, 2023年4月5日参照
  • GRID. 「発電機起動停止計画を最適化」. https://gridpredict.jp/our_service/electricpower/, 2023年4月5日参照
  • 関西電力. 「IoTを活用した火力発電所向け遠隔監視サービスの提供開始について」. https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2017/0919_1j.html, 2023年4月5日参照

Lesson 5 Chapter 8
教育分野での事例

教育分野におけるAIの導入事例を紹介します。 教育分野においては、個人の学習傾向に合わせてプログラムを提供する適応学習(アダプティブ・ラーニング)、解答の採点、学生からの質問の対応などに、AIを応用する取組みがみられます。

atama plus 株式会社は、塾・予備校向けにAIを利用した学習システム「atama+」を提供しています。 生徒ごとに異なる理解度・学習履歴・ミスの傾向などに合わせAIがその生徒専用のカリキュラムを作成することや、 生徒の集中度や学習の進捗をAIがリアルタイムで解析して先生に伝えること、 また場所を選ばずに利用できることなどによって、新しい教育のあり方を目指しているといいます。

また株式会社EduLabグループは、OpenAI社の「GPT-3.5」を活用した、新たなAI自動採点エンジンの提供を開始しています。 英語のライティング問題の採点において、文法やスペルミスだけでなく前後の文脈から適切な表現が使われているかなどを、人が採点するときと同じようにAIが判断することで、 高精度な自動採点を実現するとともに、より適切な表現をAIが提案するなど、今後の学習にも役立てることが可能であるといいます。

また東北大学は、AIによる記述式答案の自動採点について品質保証する手法を構築しています。 AIによる記述式答案の自動採点精度は飛躍的に向上しており、実用化への機運が高まっている中で、 人間の採点者とAIが自動採点結果の確信度を元に採点作業を分担することで、採点の品質を保証する実践的なフレームワークを構築し、その実現性を確かめたといいます。


出典

  • atama+. 「AIで、一人ひとりに、最短で「わかる!」を。」. https://corp.atama.plus/service/, 2023年4月5日参照
  • PR TIMES. 「GPT-3.5を活用したAI自動採点エンジンの提供を開始 ~採点精度が大幅に向上した、汎用性の高い新採点システム~」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000019528.html, 2023年4月5日参照
  • 東北大学. 「人間とAIの協調により記述式答案自動採点の品質を保証 ─AIによる安全な自動採点の実現に道─」. http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/08/press20220831-01-ai.html, 2023年4月5日参照

Lesson 5 Chapter 9
物流分野での事例

物流分野におけるAIの導入事例を紹介します。業務効率化や自動化を目的に、自動走行技術を用いた輸送・配送や、倉庫作業の改善などがAIを用いて進められています。

株式会社商船三井と商船三井システムズ株式会社はDX推進の取り組みの一環として、AIの基盤技術である数理最適化を活用する自動車船の配船計画支援システムを運用しています。 世界各地の自動車の生産拠点と消費地を結ぶ海上輸送ルートは多様であり、理論的には全船で数百万通りにものぼる組み合わせの中から最適解を導き出す必要がある中で、 数理最適化技術を用いて最適な配船計画を短時間で導き出すアルゴリズムを開発したといいます。

またパイオニア株式会社と豊田通商株式会社は連携して、物流業務における配送プロセスの効率化や省人化を実現するクラウド型の「最適配送計画サービス」を推進しています。 パイオニア独自のモビリティAIプラットフォーム「Piomatix」から商用車の運行ルートを最適化する「Piomatix LBS API」を、「最適配送計画サービス」における配送ルートの作成や走行距離、所要時間の算出に使っており、 受取指定時間の遵守と輸送効率を両立したラストワンマイル配送サービスを実現するといいます。

また株式会社日立インダストリアルプロダクツは、作業負荷軽減、物流変動にも柔軟に対応可能な小型無人搬送ロボット「Racrew(ラックル)」を提供しています。 専用棚の下に潜り込み、作業者のもとへ棚を直接搬送することで、作業負荷の大きい徒歩の時間を大幅に減少させ、生産性を向上させるといいます。 また商品の格納形態や配置換え・移設にも対応しやすくなっているといいます。


出典

  • Ledge.ai. 「商船三井、AI技術応用で配船計画を支援 膨大な組み合わせから最適な計画を短時間に」. https://ledge.ai/mol-molis-ship-allocation-plan/, 2023年4月5日参照
  • Pioneer. 「パイオニアと豊田通商、協業でラストワンマイル配送の物流DXを推進 ~「Piomatix LBS API」を活用した「最適配送計画サービス」の提供を開始~」. https://jpn.pioneer/ja/corp/news/press/index/2752/, 2023年4月5日参照
  • 株式会社日立インダストリアルプロダクツ. 「小型無人搬送ロボット「Racrew」」. https://www.hitachi-ip.co.jp/products/logistics/products/racrew/index.html, 2023年4月5日参照

Lesson 5 Chapter 10
行政分野での事例

行政におけるAIの導入事例を紹介します。政府や地方自治体では、行政サービスの向上や事務作業の効率化という観点においてAIを活用する動きが起きています。

さいたま市では、AIによる保育所入所選考マッチングが導入されています。 職員が1,500時間かけて実施していた約8,000⼈、300施設への入所選考作業を、ゲーム理論を用いたAIの導入により数秒で完了し、決定通知の早期発信など住民サービスを向上させることができたといいます。

また株式会社アイネスが販売している、AIが対話することにより知りたい情報について候補の選択肢を提示する「AIスタッフ総合案内サービス」は、相模原市や美濃加茂市などいくつかの自治体が導入しています。 住民からの子育て、引越し・住所変更の手続き、ごみの出し方、住民票や戸籍、各種書類の請求などさまざまな問い合わせに学習済みAIによるチャットが幅広く回答するといいます。

また株式会社アドバンスト・メディアが提供する、AI音声認識 議事録作成支援ソリューション「AmiVoice ScribeAssist」および「ProVoXT」は、全47都道府県の自治体に導入されています。 国主導の働き方改革推進、AIを活用した⾧時間労働の是正などに加えて、新型コロナウイルス感染症対策で急激に普及したWEB会議での字幕表示やWEB会議の議事録作成、庁内全体での運用・導入など、近年自治体での音声認識の需要はますます拡大しており、 400件の導入実績があるといいます。


出典

  • 総務省資料. https://www.soumu.go.jp/main_content/000683248.pdf, 2023年4月5日参照
  • アイネス. 「AIスタッフ総合案内サービス」. https://www.ines.co.jp/service/ai-staff.html, 2023年4月5日参照
  • 美濃加茂市. 「AIチャットボット「AIスタッフしつぎおとうふくん」をご利用ください」. https://www.city.minokamo.gifu.jp/shimin/contents.cfm?base_id=12676&mi_id=6&g1_id=22&g2_id=88, 2023年4月5日参照
  • 相模原市. 「AI(人工知能)が質問に答えるチャットボットサービスを開始しました」. https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/shisei/1026875/koho/1026879/1019776.html, 2023年4月5日参照
  • PR TIMES. 「自治体導入400件突破記念!『自治体向けAI音声認識 議事録作成ソリューション 30日間無償トライアルキャンペーン』を開催」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000288.000020223.html, 2023年4月5日参照

Lesson 5 Chapter 11
スポーツ分野での事例

スポーツにおけるAIの導入事例を紹介します。競技の運営、選手のサポート、そして観戦などでAIが活用されてきています。

ソニー株式会社は、人の視力の限界を超える速さや複雑なプレーを判定する審判員を可視化のテクノロジーでサポートする「Hawk-Eye」を開発しています。 ボールトラッキングと、ビデオリプレイ技術を活用したスマートテクノロジーが主な技術で、ボールトラッキングはテニスのイン・アウト判定、サッカーのゴール判定などで導入されており、 スマートテクノロジーのビデオリプレイはサッカーのVARやラグビーのTMOなどのビデオ判定サポートシステムで採用されています。

また富士通株式会社は、自社の女子バスケットボールチームの強化に画像認識技術によるAIを使っています。 選手とボールの画像を大量に読みこんで特徴を学習させ、対象を区別する精度を高めたといい、 またバスケ特有の動作を計算に取りいれるなど、2年近く改良を重ねたといいます。

また株式会社 NTTSportict は、スポーツAIカメラの可搬式モデル「Pixellot Air」を用い、アマチュアチーム向けに機能と価格を特化した「STADIUM TUBE for Team」を提供しています。 競技場に設置するだけで、試合のルールを学習したAIカメラが本格的なカメラワークで試合を自動で撮影・編集するといいます。 サッカー、バスケットボール、野球、バレーボールなど8種類のスポーツに対応しています。


出典

  • 日経産業新聞. 「富士通、ITでバスケ強化 AIがコーチ補佐」. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO19831000Z00C17A8000000/, 2023年4月5日参照
  • Sony. 「ホークアイ(Hawk-Eye) 可視化のテクノロジーでスポーツの感動を支える」. https://www.sony.com/ja/SonyInfo/technology/stories/Hawk-Eye/, 2023年4月5日参照
  • PR TIMES. 「アマチュアスポーツチームに特化したAIカメラサービスSTADIUM TUBE for Teamをリリース【NTTSportict】」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000076870.html, 2023年4月5日参照