Lesson 5

論理演算の基本法則

Lesson 5 Chapter 1
交換法則

Lesson5では論理演算の基本法則について説明します。 Lesson3で説明した通り、論理学における命題は、真偽値を用いることで数学のように計算することができます。 論理演算における基本法則とは、命題を計算する際のルールであり、論理演算の式やプログラミングコードの条件式を簡略化するために使われます。

Chapter1では論理演算の交換法則について説明します。 論理演算の交換法則とは、論理演算において、二つの項(命題)を入れ替えても結果が変わらないことを表す法則です。 つまり、命題Aと命題Bを結合した場合、A∧B(論理積)やA∨B(論理和)の結果は、B∧AやB∨Aと同じになるということです。 なお、論理積と論理和の内容については、それぞれLesson3のChapetr2とChapter3で説明しています。 命題Aと命題Bの交換法則については以下のように表されます。

命題Aと命題Bの論理積についての交換法則

A ∧ B = B ∧ A

命題Aと命題Bの論理和についての交換法則

A ∨ B = B ∨ A

論理演算においても、通常の四則演算と同じように、計算の前後を入れ替えても結果は変わりません。 命題Aと命題Bに真偽値を代入した場合の交換法則は以下のように表されます。

例1:命題Aと命題Bの論理積の交換法則

A = 0 , B = 1 の場合、
A ∧ B = 0 、 B ∧ A = 0 となり、
A ∧ B = B ∧ A となる。

例2:命題Aと命題Bの論理積の交換法則

A = 1 , B = 1 の場合、
A ∧ B = 1 、 B ∧ A = 1 となり、
A ∧ B = B ∧ A となる。

上の例では、演算結果は命題Aと命題Bを入れ替えても同じであり、論理積A ∧ Bと論理積B ∧ Aが等しいことが分かります。

例3:命題Aと命題Bの論理和の交換法則

A = 0 , B = 1 の場合、
A ∨ B = 0 、 B ∨ A = 1 となり、
A ∨ B = B ∨ A となる。

例4:命題Aと命題Bの論理和の交換法則

A = 1 , B = 1 の場合、
A ∨ B = 0 、 B ∨ A = 1 となり、
A ∨ B = B ∨ A となる。

上の例では、演算結果は命題Aと命題Bを入れ替えても同じであり、論理和A ∧ Bと論理和B ∧ Aが等しいことが分かります。

以上が論理演算における交換法則の説明になります。論理演算においても通常の四則演算と同じように計算の前後を入れ替えても結果は変わりません。

Lesson 5 Chapter 2
べき等法則

Chapter2では論理演算のべき等法則について説明します。 論理演算において、べき等法則とは同じ論理式どうしの論理和と論理積はもとの論理式と同値であるという原則を指します。 べき等法則については以下のように表されます。

論理積Aに関するべき等法則

A ∧ A = A

論理和Aに関するべき等法則

A ∨ A = A

上の式では命題Aの論理演算に関して、演算後も結果が変わらないことが示されています。 つまり命題Aについて、何度も繰り返しても実行結果が同じであるということです。

命題Aに真偽値を代入した場合のべき等法則は以下のように表されます。

例1:命題Aに1(真)を代入した場合の論理積におけるべき等法則

A = 1 の場合、
A ∧ A = 1 ∧ 1 により、
A = 1 となる。

例2:命題Aに0(偽)を代入した場合の論理積におけるべき等法則

A = 0 の場合、
A ∧ A = 0 ∧ 0 により、
A = 0 となる。

例3:命題Aに1(真)を代入した場合の論理和におけるべき等法則

A = 1 の場合、
A ∨ A = 1 ∨ 1 により、
A = 1 となる。

例4:命題Aに0(偽)を代入した場合の論理和におけるべき等法則

A = 0 の場合、
A ∨ A = 0 ∨ 0 により、
A = 0 となる。

以上がべき等法則の説明になります。 上の例で説明したように、べき等法則とは計算を何度も繰り返しても実行結果が同じであるということです。

Lesson 5 Chapter 3
二重否定の法則

Chapter3では二重否定の法則について説明します。 否定については、Lesson2のChapter6とLesson3のChapter1で説明した通り、元の命題の真偽を反転させることを指します。 二重否定の法則とは、否定の否定は元の命題と同じ意味であるという法則であり、真偽を反転させた命題の真偽を再び反転させることを指します。 具体的には、命題Aが真であるとき「Aではない(¬A)」という命題が偽であることは明らかです。 そして、この「Aではない(¬A)」が偽であるとき、再度否定をかけて「A」が真であることが導かれます。 つまり「¬(¬A)」は「A」と等価であるということです。 命題Aに関する二重否定の法則は以下のように表されます。

例4:命題Aに0(偽)を代入した場合の論理和におけるべき等法則

A = 0 の場合、
A ∨ A = 0 ∨ 0 により、
A = 0 となる。

命題Aの二重否定の法則

¬(¬A) = A

上の式では、一度否定した命題¬Aについて、再度否定の記号をつけて否定しています。

命題Aに真偽値を代入した場合の二重否定の法則は以下のように表されます。

例:命題Aについての二重否定の例文

A = 1 の場合、
¬A = 0、¬(¬A) = 1 により、
A = ¬(¬A) となる。

上の例では、命題Aに1(真)を代入した後に否定し、さらに否定して真偽値を元の1(真)に戻しています。

以上が二重否定の法則の説明となります。二重否定とは、元の命題を反転させた命題を再度反転させたものであり、元の命題と同じであると言えます。

Lesson 5 Chapter 4
結合法則

Chapter4では、結合法則について説明します。 論理演算における結合法則とは、複数の命題をつなぎ合わせた式に対して、演算の順序を変えても結果が変わらないことを示す法則です。 結合法則の概要は、通常の四則演算における括弧内の計算と同じです。命題A,B,Cに関する結合法則は以下のように表されます。

命題A,B,Cの論理積における結合法則

(A ∧ B) ∧ C = A ∧ (B ∧ C)

命題A,B,Cの論理和における結合法則

(A ∨ B) ∨ C = A ∨ (B ∨ C)

上の式では、通常の四則演算同様、括弧の中を先に計算します。 演算の順序を変えても式全体の真偽値は変わらないことが分かります。

命題A,B,Cに真偽値を代入した場合の結合法則は以下のように表されます。

例1:命題Aに1(真)、命題Bに0(偽)、命題Cに1(真)を代入した場合の結合法則

A = 1, B = 0, C = 1 の場合、
(A ∧ B) ∧ C = (1 ∧ 0) ∧ 1 = 0 により、
A ∧ (B ∧ C) = 1 ∧ (0 ∧ 1) = 0 となる。

例2:命題Aに0(偽)、命題Bに1(真)、命題Cに0(偽)を代入した場合の結合法則

A = 1, B = 0, C = 1 の場合、
(A ∧ B) ∧ C = (1 ∧ 0) ∧ 1 = 0 により、
A ∧ (B ∧ C) = 1 ∧ (0 ∧ 1) = 0 となる。

以上が論理演算の結合法則の説明となります。これらの例から、論理演算においても通常の四則演算と同じルールが適用されているのが分かります。

Lesson 5 Chapter 5
吸収法則

Chpater5では論理演算における吸収法則について説明します。 論理演算における吸収法則とは、2つの論理式を組み合わせることでより簡潔な式を導くことができる法則です。

命題Aと命題Bの論理積と論理和の吸収法則については、以下のように表されます。

論理積の吸収法則

A ∧ (A ∨ B) = A

上の式では、命題Aについて論理和(A ∨ B)を掛けても命題Aが成り立つことが示されています。 つまり、命題Aが成り立っている場合、論理和に含まれるBの条件は無視して命題Aだけで結論を導くことができるということです。

論理和の吸収法則

A ∨ (A ∧ B) = A

上の式では、命題Aについて論理積(A ∧ B)を足しても命題Aが成り立つことが示されています。 つまり、命題Aが成り立っている場合、論理積に含まれるBの条件は無視して命題Aだけで結論を導くことができるということです。

命題Aと命題Bに真偽値を代入した場合の吸収法則は以下のように表されます。

例1:命題Aと命題Bの論理積の吸収法則

A = 1, B = 0 の場合、
A ∧ (A ∨ B) = A により、
1 ∧ (1 ∨ 0) = 1 となり、
1 ∧ 1 = 1 となる。

上の例では、括弧内の論理和が演算されたあと、吸収法則が成り立つことが示されています。

例2:命題Aと命題Bの論理和の吸収法則

A = 1, B = 0 の場合、
A ∨ (A ∧ B) = A により、
1 ∨ (1 ∧ 0) = 1 となり、
1 ∨ 1 = 1 となる。

上の例では、括弧内の論理積が演算されたあと、吸収法則が成り立つことが示されています。

以上が論理学の吸収法則の説明となります。上の例のように式を簡略化することができるので、複雑な式を整理するのに活用できます。

Lesson 5 Chapter 6
分配法則

Chapter6では論理演算の分配法則について説明します。 論理演算における分配法則とは、論理式の中の論理積と論理和の順序を入れ替えても式の意味は変わらないということです。 分配法則の概要は通常の四則演算の括弧の展開と同じです。

論理演算における分配法則は以下のように表されます。

命題A,B,Cの論理積の分配法則

A ∧ (B ∨ C) = (A ∧ B) ∨ (A ∧ C)

命題A,B,Cの論理和の分配法則

A ∨ (B ∧ C) = (A ∨ B) ∧ (A ∨ C)

上の式では論理式の中の論理積と論理和の順序を入れ替えることができることを示しています。 同様に「A ∨ (B ∧ C)」という論理式も「(A ∨ B) ∧ (A ∨ C)」という等価な論理式に変換することができます。

命題Aと命題Bについて真偽値を代入した場合の分配法則は以下のように表されます。

例1:命題A,B,Cの論理積の分配法則

A = 0, B = 1, C = 0 の場合、
A ∧ (B ∨ C) = 0 ∧ (1 ∨ 0) = 0 により、
(A ∧ B) ∨ (A ∧ C) = (0 ∧ 1) ∨ (0 ∧ 0) = 0 となる。

例2:命題A,B,Cの論理和の分配法則

A = 0, B = 1, C = 0 の場合、
A ∨ (B ∧ C) = 0 ∨ (1 ∧ 0) = 0 により、
(A ∨ B) ∧ (A ∨ C) = (0 ∨ 1) ∧ (0 ∨ 0) = 0 となる。

上の例から、論理演算における分配法則も通常の四則演算の括弧を外して展開する計算と同じであることが分かります。

以上が論理演算における分配法則の説明となります。 上の式から、論理演算においても通常の四則演算の展開と同じ法則が適用されていることが分かります。

Lesson 5 Chapter 7
ド・モルガンの法則

Chapter7ではド・モルガンの法則について説明します。 ド・モルガンの法則とは、論理和と論理積を入れ替えたものに否定を適用することができることを示す法則です。 具体的には「AまたはB」の否定が「Aの否定かつBの否定」に等しいということであり「AかつB」の否定は「Aの否定またはBの否定」に等しいということです。

ド・モルガンの法則は以下のように表されます。

論理和の否定の変換

¬(A ∨ B) = (¬A) ∧ (¬B)

上の式から「AまたはB」の否定は「Aではなく、かつBでもない」ということが分かります。

論理積の否定の変換

¬(A ∧ B) = (¬A) ∨ (¬B)

上の式から「AかつB」の否定は「Aではない、またはBではない」という意味になります。

次に、命題Aと命題Bに真偽値を入れた場合のド・モルガンの法則は以下のように表されます。

例1:命題Aと命題Bの論理和の否定の変換

A = 1, B = 0 の場合、
¬(A ∨ B) = (¬A) ∧ (¬B) により、
¬(1 ∨ 0) = 0 となり、
(¬A) ∧ (¬B) = 0 ∧ 1 = 0 となる。

上の式から、命題Aと命題Bの論理和の否定が、命題Aの否定と命題Bの否定の論理積となることがわかります。

例2:命題Aと命題Bの論理積の否定の変換

A = 1, B = 0 の場合、
¬(A ∧ B) = (¬A) ∨ (¬B) により、
¬(1 ∧ 0) = 1 となり、
(¬A) ∧ (¬B) = 0 ∨ 1 = 1 となる。

上の式から、命題Aと命題Bの論理積の否定が、命題Aの否定と命題Bの否定の論理和となることがわかります。

以上がド・モルガンの法則について説明になります。 ド・モルガンの法則は基本情報処理や応用情報処理などの資格試験ではよく出題されるため、是非とも抑えておきたいところです。

以上が論理演算の基本法則となります。 論理演算における基本法則も、通常の四則演算と同じ部分があり、違う部分を理解しながら進めていくと、理解が早まると思います。