Lesson 2

サーバーの基礎知識

Lesson 2 Chapter 1
サーバーの運用形態

レッスン1では、サーバーにはコンピュータとしてのサーバーと、ソフトウェアとしてのサーバーがあることを説明しました。 では、サーバーとして使用されているコンピュータにはどのような特徴があるのでしょうか?

まずは実際のサーバーがどのように運用されているのかについて学んでいきましょう。
このレッスンではコンピュータとしてのサーバーの基礎知識について学習していきます。

サーバーには大きく分けて「物理サーバー」と「仮想サーバー」の2つがあります。
「物理サーバー」はその名の通り物理的に存在しているサーバーです。自社で運用している専用サーバーや、1台のサーバーを複数名で共有して使用するレンタルサーバーがあります。
「仮想サーバー」は1台の物理サーバー上に仮想技術を使って複数のサーバーを作り出し、それを仮想サーバーとして提供しています。

名称 種類 特徴
物理サーバー 専用サーバー ハードウェアを専有
レンタルサーバー 複数名でハードウェアを共有
仮想サーバー クラウド クラウド事業者が保有する設備を提供
VPS(Virtual Private Server) 仮想的に構築したサーバーを提供

それではこの中から専用サーバーとして代表のオンプレミスと、オンプレミスからの移行も多いクラウドを詳しく見ていきましょう。

オンプレミス(自社運用)

オンプレミスとは自社で専用のサーバーシステムを構築し、社内の人材で管理する運用形態のことです。ネットワーク機器もサーバーも自社のものなので、思い通りのシステムを構成することができます。 自社オフィス内にサーバールームを設置して運用するほか、サービス事業者のデータセンターで運用するサービス(ハウジングサービス)もあります。
どちらに設置するかは「熱対策」「電源対策」「地震対策」「セキュリティ対策」などを検討して費用を考慮し決めていきます。

サーバーの設置場所の検討事項

・「熱対策」温度が上がりすぎるとシステムダウンする可能性がある。
・「電源対策」電力を安定的に供給する必要がある。停電対策も必要。
・「地震対策」地震発生時にサーバーが転倒しないようにする必要がある。
・「セキュリティ対策」第三者に触れられないように施錠や入退出管理できる場所が必要。

以前は企業におけるシステム構築はオンプレミスが主流でしたが、後にクラウドという運用形態が登場したため、クラウドと区別するためにオンプレミスと呼ばれるようになりました。

クラウド

クラウドとはクラウド事業者が提供する仮想サーバーをネットワークを通じて利用できるサービスです。 コンピュータやソフトウェアを自ら保有するのではなく、クラウド事業者が保有する設備をネットワーク越しにサービスとして利用します。
代表的なサービスではアマゾンのAWSやマイクロソフトのAzure、グーグルのGCPなどがあります。クラウドサービスにもいくつか種類があるので確認しましょう。

  • IaaS(Infrastructure as a Service)
  • IaaSは「イアース」や「アイアース」と呼ばれています。
    IaaSはネットワークやCPU、メモリ、ストレージなどのインフラを提供するサービスです。
    利用者はメモリやストレージの容量、CPUやOSの種類を選択すると、ソフトウェアがインストールされていない空のサーバーが提供されます。 このサーバーに対して必要なソフトウェアをインストールして、利用者自らシステムを構築します。

  • PaaS(Platform as a Service)
  • PaaSは「パース」と読みます。
    PaaSはIaaSで提供するインフラの部分に加えて、アプリケーションを稼働するためのプラットフォームを提供するサービスです。
    プログラミング言語やデータベースなどを提供し、アプリケーション開発、開発したアプリケーションの実行環境として運用されています。

  • SaaS(Software as a Service)
  • SaaSは「サース」と読みます。
    SaaSはソフトウェアを提供するサービスです。 IaaSやPaaSのように基盤部分を考慮する必要もなく、利用したいソフトウェアを選択して、Webブラウザからアクセスしサービスを使用します。
    グーグルが提供するGmailやGoogleマップなどが有名です。

IaaS > PaaS > SaaS の順に管理するものが少なくなり、管理は楽になりますが柔軟性も限られていきます。

メリット・デメリット

オンプレミスとクラウドのメリット・デメリットを確認しましょう。

運用形態 メリット デメリット
オンプレミス 自由な構成でシステムが組める
既存のシステムと連携しやすい
セキュリティが強固
トラブルの状況が把握しやすい
非常に高価
管理する人材の育成が必要
実運用までに時間がかかる
クラウド 必要最低限の予算で運用可能
構築に時間がかからない
故障してもリカバリーが早い
必要に応じてスペックを変更可能
セキュリティは提供ベンダーに依存
提供されている範囲内でしか構成できない
トラブルの状況が把握しづらい

オンプレミスとクラウドサーバーは一長一短で、どちらが良いとは言えません。最近では両方を併用する「ハイブリッドクラウド」というシステムも増えていますが、どのシステムを利用するかは規模や用途によって代わってきます。

次のチャプターではサーバーで使用されているOSの種類を学習していきましょう。

Lesson 2 Chapter 2
OSの種類

OS(Operating System)とは、コンピュータ全体を管理し、人が使いやすいように制御する大切な役割を担っています。

クライアント側(利用者側PC)で使用されているOSにはWindowsやMac、Linuxなどがありますが、サーバーで使用されているOSには大きく分けてWindows系とUNIX系の2種類があります。 サーバーOSはグラフィックス処理やサウンド処理などのサービスとは関係ない機能を抑える一方で、いろいろな管理機能を追加したり、多くの接続要求に耐え常時安定して稼働できるように最適化されています。 このチャプターでは各サーバーOSにどのような特徴があるのか学んでいきましょう。

Windows系

Windows Serverはマイクロソフトからリリースされている、Windowsをサーバー用にパワーアップさせた製品で、Windowsと同じようにGUIで直観的に操作することが可能です。
Officeなどのマイクロソフト製品との親和性が高く、Windowsアプリケーションの統合運用のためにWindows Serverが多くの企業で採用されています。 ライセンス料は高いのですが、困ったときにはマイクロソフトのサポートを受けることもできます。

Active Directory

企業がWindows Serverを選択する理由の1つとしてActive Directoryがあります。
通常はそれぞれのコンピュータが、そのコンピュータを使用するユーザーアカウント・パスワードを持っているため、それぞれのコンピュータで管理しているユーザーアカウントでサインインして使用します。
Active Directoryを利用すると、ユーザーアカウントをサーバー内で一元的に管理することができます。 つまりActive Directoryドメインに参加する設定をすると、同じドメインに参加しているどのコンピュータにでも、同じユーザーアカウントとパスワードでサインインできるようになります。
アクセス権などの設定も可能で、プリンターにアクセスできる権限を付与している場合は、サインインするだけでプリンターにアクセスすることが可能になります。 アクセス権のほかにも様々なルールをグループごとに細かく設定できるため、企業では社内のユーザーやコンピュータなどを一元的に管理するために利用しています。

UNIX系

UNIXは1969年にAT&Tベル研究所によって開発された安定性の高いOSで、学術機関や専門性の高い分野などに利用されてきました。このUNIXのように動作するように作られたOSのことをUNIX系OSと呼びます。 UNIX系OSはWindows Serverとは対照的にCLIでの操作がメインになるので専門のスキルが必要になってきます。
代表的なUNIX系OSとしてLinuxがあります。Linuxにはたくさんの「ディストリビューション」と呼ばれるパッケージにまとめられた配布形式が存在するので、有名なものをいくつか紹介しましょう。

名前 特徴
Red Hat Enterprise Linux Red Hat社が開発した商用のLinuxディストリビューション。サポートを受けることも可能で大規模システムで利用されている。
CentOS Red Hat Enterprise Linuxから商用部分を取り除いて無償で利用できる。無償でありながら動作が非常に安定している。但しサポートを受ける場合は別途費用が掛かる。
Ubuntu サーバー向けOSの他、GUIで利用できるデスクトップ環境も配布されているので誰にでも扱いやすく人気No1のLinuディストリビューション。

UNIX系OSは昔からサーバーOSとして利用されてきた実績と、無償で利用できるものが多いことからもサーバー向けOSとしてはWindows Server以上の大きなシェアを持っています。

メリット・デメリット

このチャプターで学んだサーバーOSのメリット・デメリットを確認しましょう。

サーバーOSの種類 メリット デメリット
Windows系
Windows Server
GUIで操作可能
マクロソフト製品との親和性が高い
有償・無償のサポート有り
ライセンス料が高い
UNIX系
Linux(多数のパッケージ)
無償のものが多い
セキュリティが高い
処理速度が早い
CLIでの操作がメイン
無償のものはサポートが有料

企業が社内で使用しているWindowsPCとユーザーをまとめて管理する必要がある場合はWindows Serverを利用、それ以外はUNIX系OSを利用することが多いようです。

このチャプターではOSの種類について学びました。次のチャプターでは物理サーバーの種類について学びましょう。

Lesson 2 Chapter 3
物理サーバーの種類

物理サーバーを利用する場合、どのような筐体(ケース)に格納して運用するかによっていくつかの種類があります。 この章では「タワー型」「ラックマウント型」「ブレード型」の3つを見ていきましょう。

タワー型

タワー型サーバーは、デスクトップPCと同じようにある程度の大きさがある筐体で、単体で使用されることが多いのが特徴です。 据え置き型の機器で専用のサーバールームがなくともそのまま設置可能です。 他のサーバーとの連携は難しいため、小規模なシステムで使用されています。

ラックマウント型

ラックマウント型サーバーは、サーバーラック(19インチラック)と呼ばれる筐体に格納されていて、複数のサーバーを組み合わせて使用されることが多いサーバーです。 サイズは規定されていて、1U(ユニット)サーバーは高さ45mm×幅19インチ(480mm)×奥行540mmになっています。2Uサーバでは高さが2倍になり、Uが大きくなるにつれ幅の19インチは変わらず高さがのみ大きくなっていきます。 データセンターや社内サーバールームなど中規模以上のシステムで利用されています。

ブレード型

ブレード型サーバーは、シャーシという筐体にブレードサーバーという薄いサーバーを差し込んで利用するサーバーです。 ブレードサーバーにはCPUやメモリ、ストレージなどのコンピュータとして動作するために必要な機能が搭載されていて、シャーシ側に電源や冷却装置などの外部インターフェイスを搭載し各ブレードサーバーが共有するように設計されています。 これによりラックマウント型よりも小スペース(高密度)な設置が可能になりました。また、増設や拡張が容易なことから様々なシステムで利用されています。

メリット・デメリット

このチャプターで学んだ物理サーバーのメリット・デメリットを確認しましょう。

名称 メリット デメリット
タワー型 導入費用が少額
設置が容易
増設・拡張がしにくい
ラックマウント型 セキュリティが堅牢
物理故障リスクを軽減
管理・運用がしやすい
専用のサーバールームが必要
運用コストが高い
消費電力が大きい
ブレード型 運用コストを削減
設備がシンプル
増設・拡張が用意
導入費用が高額

このレッスンではサーバーの基礎知識について学んできました。

次のレッスンではサーバーの機能にはどのような種類があるのか学習していきましょう。